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キャリア発達の理論には、すべてを統一するような統合理論はありません。
また、理論はあくまでも単純なモデル化ですので制約や限界もあります。

とはいうものの、キャリア発達の理論は、これまでのキャリアを振り返るツールになります。

同時に、これからのキャリアデザインを設計するためのガイドラインにもなります。

キャリア理論は個人がキャリアを考える際の道標の役割を果たしてくれます。

なじみやすく、しっくりとくる理論家・理論を見つけ自由に組み合わせて、あなただけのキャリア戦略を考えるキッカケに役立てていただければと思います。

【注意】
ここで紹介するキャリア発達の理論は一部であり、個人的な解釈や私見を含んでいます。

初回キャリア相談へ

フランク・パーソンズは、産業革命以降のアメリカ(ボストン)で職業指導運動に従事しました。その支援活動を通じて、何度も転職を繰り返す人々に注目し、その失敗の原因を、技能の不足ではなく、場当たり的な職探しが多くの失敗の原因であることに注目しました。

パーソンズは、個人の能力・特性と職業に求められるスキルが一致すればするほど、個人の仕事における満足度は高くなるという「人と職業の適合」の基本原理に基づいて、キャリア選択を援助するための「3段階プロセス」を提唱しました。

  1. 自分自身、適正、能力、興味、資源、限界、その他の資質についての明確な理解を持ち、
  2. 成功するための必須要件、条件、メリット、デメリット、報酬、就職の機会、
    様々な仕事
    についての展望に関する知識を持ち、
  3. 1(自己理解)2(仕事知識)事実の関連について推論する

パーソンズは、個人のキャリア選択にあたっては、自己理解と仕事知識を踏まえた「3段階プロセス」が必要だと考えました。

ウィリアムソンは、人の「特性」と「因子」(=仕事内容や要件)に注目し、
特性因子論を提唱しました。

個人の持つ(仕事に関連する)スキル・能力(=特性)と、それぞれの仕事が必要とするスキル・能力(=因子)とをマッチングさせることが、よい職業選択や職業適応をもたらす」

との考え方を示しました。
そして、キャリアに関する課題は予測することが可能で、

  1. 選択しなかったことによる課題
  2. 不確かな選択
  3. 賢明でない選択
  4. 興味と適性のずれ

の4つのいずれかになると指摘しています。

ジョンLホランドは、カウンセラーとしての豊富な経験から、個人のキャリア選択は個人のパーソナリティと仕事の環境との相互作用の結果からできあがるとし、
「個人は自分のパーソナリティと一致するような環境で仕事をすることにより、より安定した職業選択をすることができ、より高い職業的満足度を得ることができる」
と提唱しました。

ホランドは、パーソナリティの特徴を6つのパーソナリティ・タイプに分類し設定しています(1つのタイプに限定するのではなく、自分に近い順に3つのタイプでパーソナリティを表します)。

パーソナリティ・タイプ ※1

適職キャリア ※2

 現実的(Realistic) 

 技術系キャリア

 研究的 (Investigative)

 サイエンス系キャリア

 芸術的 (Artistic)

 芸術系キャリア

 社会的(Social)

 ソーシャル・サービス系キャリア

 企業的(Enterprising)

 管理系キャリア

 慣習的(Conventional)

 ルーティン系キャリア

※1:ホランドは、環境の特徴にも同様に、同じ6つの環境タイプがあると分類しています。
※2:プレディガーは、ホランド理論を仕事で扱う対象(4つ)に結びつけて考えました。 

RIASEC

現実的 → モノ
研究的・芸術的 → アイデア
社会的 → 人
企業的・慣習的 → データ 

適職探しのためには、あなたがどのタイプのパーソナリティに該当するか?を自覚しておくことは参考になります。

エリクソンは、フロイトの性格形成過程の理論を人生全体に拡張し、
一生を8段階に分け、各段階に対立する心理・社会的危機があるとしました。

そしてその克服が重要であり、8つの発達課題を順番に克服してゆくプロセスで「基本的強さ」を得、次の発達段階に進みながらアイデンティティを形成してゆくと考えました。

8つの発達段階(乳児期~老年期)の中でも特に、アイデンティティを確立する青年期を重要視し、20代は自分探しの大切な時期(モラトリアム)として位置づけています。

JACCAキャリアデザインプログラムへ

ギンズバーグは、経済学者・精神科医・社会学者・心理学者で構成された研究グループをつくり、

  1. 職業選択は、(生涯にわたる)長い年月をかけた発達のプロセスである。
  2. 職業選択は、個人の興味・能力・価値などと現実との折り合いをつけてゆくプロセス。
  3. 職業選択には、自我が重要な役割を果たす。

ということを示した。

仕事から満足を得ようとする個人にとっての職業選択は、生涯にわたる意思決定のプロセスであり、変化する自分のキャリア目標と世の中の職業との現実をどのように最適化してゆくか、繰り返し再評価することが必要になります。

スーパーは、ギンズバーグなどの研究を集約・発展させ整理しました。
人生を5つの発達段階に整理し、段階毎の発達課題に取組むことを通じて人間的な成長を遂げてゆくと考えました。

発達段階
※1

年齢
※2

発達課題

成長段階

0〜14歳

家庭や学校での経験を通じて、仕事に対する空想や欲求が高まり、職業への関心をよせる。

探索段階

15〜24歳

学校教育・レジャー活動・アルバイト・就職などから、試行錯誤をともなう現実的な探索を通じて職業が選択されていく。

確立段階

25〜44歳

前半は、キャリアの初期であり、自分の適性や能力について現実の仕事のかかわりの中で試行錯誤を繰り返す時期。
後半は、職業的専門性が高まり、自分の能力・適正を生かすことに関心を持ち、キャリアを確立する。

維持段階

45〜64歳

自己実現の段階となり、安定志向が高まり、既存のキャリアを維持することに関心をもつ。

解放段階

65歳〜

職業世界から引退する時期。セカンドライフ(新しい役割の開発)が新たな課題となる。

※1 スーパーは、今後は確立段階を経たのちに、再び探索段階に戻って新たな職業選択をおこなう人が増えてゆくと指摘しています。
※2 あくまでモデルであり、個人差が相当あることに注意が必要です。

ライフロール論(ワークライフバランス)- スーパー

スーパーは、キャリアを人生のそれぞれの時期で果たす役割(ライフ・ロール)の組合せであると考え、自分なりの価値観・興味関心・性格など(=自分らしさ)は、子供・学生・市民・労働者・配偶者・親・余暇を楽しむ人などの複数の役割を並行して果たす中で確立されてゆくと考えました。

たとえば、職場では労働者の役割があり、家庭に帰ると配偶者・親などの役割があり、休日には余暇を楽しむ人という役割をもちます。

いくつになっても研修や自己啓発で学生の役割に時間を割くこともあれば、親が年をとるとともに、子供としての役割が強くなることもあります。

あなたがどの役割に重点を置きたいかが自分らしさそのものであり、複数の役割を演じることの大切さ(いわゆるワークライフバランス)がこれからのキャリアデザインにおいてますます不可欠になっています。

充実した人生を送るためにも、あなたが大切にしたい価値観(=自分らしさ)を明確に理解し、自分らしさを満たす職業は何かを考え、自分らしさに合った職業を見つけることはとても大切なことです。

シャインは、組織と個人の関係からキャリアを考え、キャリア・アンカーという考え方を提唱しました。

キャリア・アンカーとは、キャリアに関する自己イメージをさし、次のような3つの側面があります。

  • 能力:できること
  • 欲求:やりたいこと
  • 価値観:やるべきこと

これらは、キャリアスタート時にはあいまいなものが、キャリアを積むプロセスで個人の内面で無意識に固まってくるとし、キャリア選択の際の基本方針として、キャリアを方向づける重要な役割を果たすものとなってゆきます。

20代は自分のキャリア・アンカーを育ててゆくプロセスでいろいろな仕事にチャンレンジし、成功や失敗の試行錯誤をかさねがら形成されてゆきます。

シャインの研究では、キャリア・アンカーは8つのカテゴリーに分類することが可能であることがわかりました。

  1. 専門
  2. 経営管理
  3. 自立
  4. 安定
  5. 企業家的創造性
  6. 社会への貢献
  7. チャレンジ
  8. 全体性と調和

20代のうちは、自分のキャリア・アンカーがまだ曖昧な方も多いかもわかりませんが、人生の転機や節目においては、自分のキャリア・アンカーに直面せざるを得なくなるときがやってきます。

一部のキャリア・アセスメント・ツールでは、自分のキャリア・アンカーを把握することもできます。

トランジションとは、過渡期もしくは転換期を意味し、誰もが人生の中で迎える不安や葛藤を抱えやすい時期とされています。

ブリッジスのトランジション3段階論


ブリッジスは、トランジションを年齢にかかわらず発生するものと考え、そのプロセスを3段階に分けて考えました。

  • STEP1:何かが終わる時
  • STEP2:ニュートラル・ゾーン
  • ​STEP3:何かが始まる時

STEP1では、ちゃんと終わらせることが大切です。
STEP2は、次のステップに進むには何が必要であるか?を見つける時期です。

※誰もにトランジションがあり、誰もが変化し成長してゆくためには、トランジションを乗り越える必要があると指摘しています。人それぞれにトランジションを乗り越えて行く術を身につける必要があります。

シュロスバーグによると、人生はトランジション(転機)の連続からなり、人のキャリアは、それを乗り越えるプロセスを経て形成されていくとし、トランジションを乗り越えるための対処法(4-Sモデル)を提唱しています。

トランジションが起こると、

  1. 役割(ライフロール
  2. 人間関係
  3. 日常生活
  4. 自分らしさ(自己概念

などが起きるとし、まずは、自分が転機に入ったことを受容することが大切だとしています。

そして、トランジションを乗り越えるためのフレームワークを4-Sモデルとして提唱しました。
4-Sとは、状況(シチュエーション)・自分自身(セルフ)・支援(サポート)・戦略(ストラテジー)を指します。

4-Sについて対処の方策を検討した上で、行動に移すことが大切だとしています。

転機を乗り越えるためには、自身が転機に入ったことを自覚し、その変化にたいして現状を冷静に受け止め行動計画を立てて対処することが重要です。

クランボルツは、「計画された偶発性」という考え方を提唱しました。

偶然に起こったことを、あたかも計画されていたかのように自分の中に取組むことができる人が、結果的に上手にキャリア形成してゆけるとしています。

"過去の事実"は変えられません。しかしながら、"過去の事実"を自分のなかでどう位置付けるかはいくらでも変えられます。変えられない過去へのこだわりに固執することよりも、目の前のチャンスに身を委ねてみて、前向きにチャレンジしてみる方が、将来にむかって成長でき、結果的にキャリアも成ってゆきます

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